突然だが想像してみてほしい。
懸命に働いても働いても一銭にもなっていない悲しい状況を。
「裁量労働制」を一部の営業職にも認める方向、と厚生労働省が発表した改正労働基準法案によって明らかになりました。
裁量労働制とは
裁量労働制とは、労働者自身の裁量で時間や業務遂行方法を決定できる制度です。労働時間の計算は、実際に働いた時間とは関係がなく、あらかじめ定められた時間を労働時間と見なすことができます。
業務の性質上、時間で管理するのにそぐわない業種については、企業・労働者双方にとって有益な制度となっており、これまでは専門的職種(研究職や弁護士など)や、企画管理業務(企画や調査、研究部門)など、限定された労働者に対してのみ認められていました。
裁量労働制を認める営業職とは
企画管理業務の対象業務を拡大し、顧客の求めに応じて商品・サービスを提案、販売する提案型営業業務も含める、ということが改正労働基準法案で検討されています。
具体的には「金融商品を扱う営業職など」と想定されておりますが、営業職であれば「顧客の求めに応じて商品・サービスを提案し販売する」という業務が含まれると考えられ、その業務に労働者自身の裁量があるかと言えば難しいのではないでしょうか。
企業側にとって都合のよい、「裁量労働制」とならないように労働者側も知識をつけることが必要です。
裁量労働制が適用され「残業代ゼロ」
労働者自身の裁量で時間や業務遂行方法を決定できるために、実際の労働時間の長短にかかわらず、一定時間働いたものと見なされるために、「残業代ゼロ」として悪用されることも考えられます。
労働の評価は時間ではなく成果である、ということからもこれまで以上の長時間労働を強いられる可能性もあり、良いことばかりではありません。
ホワイトカラー・エグゼンプションとは
「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは事務職などのホワイトカラーを対象に、労働時間に関係なく成果に対し給与を支払う制度です。2015年3月の通常国会で審議され、法案が成立すれば2016年4月から導入される見込みです。
長時間労働の解消、仕事内容の不公平感が解消される、と期待されておりますが「残業代ゼロ制度」との批判も根強い状態です。
すべてのホワイトカラーが対象となるわけではなく、年収1,075万円以上で、従業員の過半数が加入する労働組合のある企業が対象となっています。しかし、導入を検討され始めた当初は「年収400万円以上」と定義しており、導入後に対象を拡大していく可能性があります。
あなたの残業代正規に支払われているか
「裁量労働制」や「ホワイトカラー・エグゼンプション」の拡大・導入で残業代が支払われることが今後ますます少なくなるかもしれません。
「労働の評価は時間ではなく成果」ということを建前に、「サービス残業」を強いられることがないように正規の残業代を把握しておきましょう。
企業の「残業代」削減方法
残業代は支払われているから問題ない、というのは間違いです。本当に労働時間に見合った残業代が支払われているでしょうか。
営業手当など業務による手当
外回り営業担当などは、あらかじめ「これくらいの残業が発生するだろう」ということで「営業手当」名目で一定の額が給与に含まれており、残業代名目では支払われていないことも多いでしょう。
その「営業手当」は「何時間分の残業代」に相当しているのか把握していますか?
時間を超えている分については、本来残業代を受け取れる権利があります。会社の就業規則を確認しておきましょう。
裁量労働制
裁量労働制を適用されている方は、本来であれば仕事の進め方、出勤・退勤時間など裁量に任されているはずです。毎日の出勤・退勤時間が定められていて裁量をはさむ余地などない状態であれば「裁量労働制」を悪用していると考えられます。
名ばかり管理職
2008年にマクドナルドの店長が起こした訴訟が良く知られていますが、個々の企業における「課長」「店長」が労働基準法でいう「管理監督者」に該当するとは限りません。
労働基準法でいう「管理監督者」は、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされており、「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなくその職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。
- 重要な職務内容と権限が与えられていること
(部下の人事考課や、アルバイト・パートなどの採用・解雇の権限があるか) - 勤務形態について管理を受けないこと
(遅刻や早退で負の評価をされない) - 賃金について地位に相応しい待遇がなされていること
(一般労働者と比較し同程度の待遇ではない)
[PDF] 管理監督者の範囲の適正化 のために – 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf
また、深夜勤務については規定が除外されていませんので、深夜勤務手当の支払いが必要となります。
まとめ
残業代は2年分遡って請求することが可能です。退社時間は会社で管理するタイムカードだけではなく、会社のパソコンから「帰る」とメールするなど、会社にいた時間が明確にわかるようにしておきましょう。
また、会社の就業規則などは本来であれば誰でも閲覧できるものです。一度目を通しておくことをお勧めします。