脊髄損傷者が再び自力で歩くことを目指したトレーニング

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突然だが想像してみてほしい。
再び自分の足で歩くことを目指して。

脊髄を損傷すると、軽度でも身体の一部に感覚低下を招いたり手足の機能障害、さらに重度となると損傷部以下の全機能を喪失し、寝たきりや車椅子での生活を余技されることになります。一度損傷した脊髄は修復、再生されることはなく、現代の医学では決定的と言える治療法は存在しません。

しかし、事故や病気により脊髄を損傷した人が従来の車椅子での生活を前提とした病院のリハビリではなく、専門ジムで独自の厳しい訓練を受け運動機能の回復、そして再び歩くことを目指しています。

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脊髄損傷者専門トレーニングジム

日本初の脊髄損傷者専門トレーニングジムを展開するJ-Workout株式会社は、アメリカのサンディエゴにある世界初の脊髄損傷回復施設「Project Walk」で行われているトレーニング方法を海外へ持ち出すことを認められてスタートしました。

現在、東京スタジオ(東京都江東区木場)と大阪スタジオ(大阪府大阪市北区神山町)の国内2か所で「Project Walk」のトレーニング方法をベースに、「一生歩くことはできない」と宣告された脊髄損傷者の再歩行を目指す全身トレーニングが行われています。

2007年に神奈川県厚木市で創業した当初はわずか数人しか利用者はいなかったものの、口コミにより全国から利用者が増加していき、2015年1月に東京スタジオに移転、さらに8月には大阪スタジオをオープンするまでになりました。

年会費は24万、2時間トレーニングが25,000円、3時間で37,500円(いずれも税別)と、けして利用しやすい金額であるとは言えない高額の料金ですが、2つのスタジオには3歳から80代まで約330人が通っているといいます。

J-Workout

「リハビリ」ではなく「トレーニング」

「J-Workout」で行っているトレーニングは、いわゆる「リハビリテーション」とは異なります。

リハビリテーションは、「残された身体機能を活かし、なるべく早期に社会復帰すること」を主目的としていますが、「J-Workout」が行うトレーニングは「積極的に麻痺部分へのアプローチを行いながら全身状態の改善を図り、年単位で再歩行を目指す」というスタンスがとられており、改善に要する時間は個々の差はあるものの数か月で再歩行ができるようになった人もいるようです。

トレーニングでは脊髄損傷者1人に対し、平均で1.5人のトレーナーが常時付き添い、「残された脊髄に歩行を再教育し、脳と脊髄をつなぐ神経回路を再構築する」という考え方のもと、人間の成長過程をいちから繰り返していくことで神経を鍛えるパターントレーニングが行われます。

寝返りをうつ、はいはいをする、膝立歩きをする、物につかまり歩く、そして二本足で歩くという成長過程を繰り返し、鏡を見ながら体を動かすことで脳の指令と身体の動きを一致させ、手足と体幹を鍛える筋力トレーニングなど、それぞれにあわせたトレーニングが実施されます。

「J-Workout」の東京スタジオに通う20歳の男性は、高校時代のラグビーの練習試合で首の骨を折り、「一生歩けない」と宣告されました。自力で「歩きたい」という強い思いから「J-Workout」のスタジオに通い始め、3か月後には杖を使い数メートル歩けるようにまでなりました。

その後も週3、4日はトレーニングを続け、現在では20メートル程度を走れるまでになり、2015年8月には自力での富士登山に挑戦、見事成功しています。

男性は、「ジムに通うことで、もう一度歩きたいという希望をかなえることができた。可能性があることを多くの人に知ってほしい」と話しています。

リハビリの限界

脊髄は背骨の中央を通る神経の束で、脳からの指令を体に伝えたり、痛覚や触覚などを脳に伝える役割を果たします。

首や背中からの落下など強いショックを受けることで背骨が折れて神経が切断されたり、損傷、炎症が生じると脳からの指令が伝達できなくなり、損傷した場所が身体の上部にあるほど麻痺の範囲が広くなります。

麻痺には脊髄が切断されるなど神経伝達機能が完全に絶たれた完全麻痺と、脊髄の一部が損傷、圧迫されたことによる一部機能が残る不完全麻痺があります。

完全麻痺の場合は、たとえトレーニングを行ったとしても機能が回復することは非常に難しいことですが、不完全麻痺の場合は意欲と正しいトレーニングを続けることで、動かなかった足が動くようになったり、歩けるようになることがあります。

しかし、病院のリハビリ期間は原則で最長6か月と制限されており、退院後の生活を考えて、動かない部分を動くようにする訓練よりも、腕が使えるならば車椅子を利用するなど社会復帰を目指した生活訓練が最優先されてしまいます。

脊髄損傷者が運動機能を回復するメカニズムは、まだ十分に解明されているとはいえず、脊髄損傷者の「立って歩きたい」という希望には十分対応できていないのが現状だと指摘とされています。

再生医療に備える

日本には約10万人の脊髄損傷者がいると言われていますが、有効な治療法は現在のところありません。しかし、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使用した再生医療の研究が進みつつあり、iPS細胞を損傷した脊髄に移植する臨床研究が数年以内に開始される予定です。

脳神経外科医は、「再生医療が実現しても、長期間筋肉を動かさずにいては、筋肉が固まってしまう。将来のためにも体を動かし続けることが大切」と話しています。

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