突然だが想像してみてほしい。
ボールのないところでの動きをみてみるのもサッカーの醍醐味。
Jリーグでは2015年シーズンよりJ1の全試合で「トラッキングシステム」を導入しています。「トラッキングシステム」はリーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、プレミアリーグなどヨーロッパの主要リーグでも活用されている技術で、プレー位置、トップスピード、走行距離、スプリント回数などのデータを取得しています。
J1では毎節全試合の走行距離とスプリント回数(時速24キロ以上で走った回数)を公開しており、毎節1試合を対象にアニメーションおよびインターネットラジオ速報、各種データで試合の詳細を伝える「LIVEトラッキング」も実施しています。
この「トラッキングシステム」により、日本代表のハリルホジッチ監督が期待するガンバ大阪FW宇佐美貴史選手(22)について、代表に選出された第3節までと代表から戻った第4節以降で大きな変化が出ていることがわかります。
節 | 対戦相手 | 出場時間 | 走行距離 | スプリント |
---|---|---|---|---|
第1節 | FC東京 | 79分 | 8.23キロ | 15回 |
第2節 | 鳥栖 | 90分 | 9.30キロ | 17回 |
第3節 | 甲府 | 90分 | 9.98キロ | 8回 |
第4節 | 名古屋 | 89分 | 10.04キロ | 25回 |
第5節 | 清水 | 90分 | 10.50キロ | 27回 |
第6節 | 湘南 | 89分 | 9.59キロ | 22回 |
代表選出前の第3節までと代表から戻った第4節以降を比較すると、走行距離の増加に加えスプリント回数の増加が際立っています。
ガンバ大阪DFの岩下選手は宇佐美貴史選手の代表選出後の変化について「守備の場面で走ることでの貢献度に自ら気付いて代表から帰ってきた」と話し、2得点を挙げた清水戦後には長谷川監督も「ゴールの後も守備で献身さを見せてくれた」と評価しています。
ハリルホジッチ監督が期待する動きや守備意識の向上がスプリント回数の激増に繋がっているとみられ、「ハリルホジッチ効果」が表れているとみることができ、宇佐美貴史選手自身も「もっと無駄走りが必要。90分出たい、変えられたくないって思いをプレーで表現できれば」と強い自覚を口にしています。
マインツ所属、日本代表FW岡崎慎司選手(29)のデータ
ドイツ・ブンデスリーガ、マインツに所属する日本代表FW岡崎慎司選手(29)の直近6試合の走行距離とスプリント回数は次のようになっておりり、宇佐美選手を大きく上回っています。
節 | 対戦相手 | 出場時間 | 走行距離 | スプリント |
---|---|---|---|---|
第24節 | ボルシアMG | 90分 | 11.5キロ | 46回 |
第25節 | アウクスブルク | 90分 | 11.29キロ | 42回 |
第26節 | ウォルフスブルク | 90分 | 10.87キロ | 33回 |
第27節 | ブレーメン | 90分 | 10.37キロ | 38回 |
第28節 | レーバークーゼン | 90分 | 10.5キロ | 36回 |
第29節 | フライブルク | 90分 | 11.05キロ | 27回 |
トラッキングシステムにより取得される走行距離やスプリント回数はあくまでも目安であり、多ければサッカー選手の価値が高くなるわけではありませんが、ひとつの指標としてみてみると面白いのではないでしょうか。
また、ハリルホジッチ監督が求める動きに近づけるように宇佐美選手だけでなく、ほかの選手もJリーグでの試合から意識していく日本サッカーの質が上がっていくことを期待しましょう。
トラッキングシステム
もともとは軍事技術として開発された自動追尾(トラッキング)システムを応用したもので、スタジアムに設置した6台の専用カメラがピッチ全体を撮影し、3人のオペレーターが選手やボール、審判の動きをトラッキングしています。
選手の動きをリアルタイムでアニメーションに再現するなど、テレビ中継やWebサイトコンテンツとして多岐にわたる活用が期待されており、Jリーグの公式サイト「Jリーグ.jp」で走行距離やスプリント回数が掲載されています。
取得したデータは競技力の向上と、ファン・サポーター向けのコンテンツ生成等に活用され、試合観戦における新たな楽しみ方を提供し、新規ファン拡充の効果も期待されています。