突然だが想像してみてほしい。
厳しい厳しい戦いを乗り越えて、より厳しい環境へと身を置こうとする者の挑戦を。
日本将棋連盟のプロ棋士養成機関である「奨励会」三段リーグ編入試験が2月7日に行われました。アマチュア天野貴元さん(29)は1勝1敗、中川慧梧さん(22)は2連敗の幕開けとなりました。
将棋のプロ棋士になるためには奨励会に在籍することから始まり、三段リーグを年齢制限の26歳までに勝ち抜いて四段となることが条件となっています。
例外として、「過去1年間におけるアマチュア6棋戦優勝者は三段リーグへの編入試験を受験することができる」という規定があり、天野さんはしんぶん赤旗全国将棋大会名人戦、中川さんはアマ王将戦のタイトルをもって編入試験に挑戦することを決めました。
初日の結果を受け、天野さんは残り6局で5勝1敗、中川さんは残り6戦全勝で合格となります。
奨励会三段リーグ編入試験 天野さんは1勝1敗、中川さんは連敗スタート
http://www.hochi.co.jp/topics/20150207-OHT1T50191.html
奨励会三段リーグ編入試験概要
奨励会三段リーグ編入試験は2007年度より創設されました。
受験資格は過去1年間のアマチュア6棋戦優勝者で、四段以上のプロ棋士(日本将棋連盟正会員)から奨励会受験の推薦のある者に限られています。
受験資格に該当するアマチュア6棋戦は次の通りです。
- アマチュア竜王戦
- アマチュア名人戦
- アマチュア王将位大会
- 全国支部将棋対抗戦・個人戦
- しんぶん赤旗全国将棋大会名人戦
- 朝日アマチュア将棋名人戦
奨励会三段リーグ編入試験では奨励会に所属する二段の棋士と8対局を行い、6勝することで試験合格、三段リーグへの編入が認められるようになっています。
三段リーグ編入後も在籍は最長で4期(2年)のみとなり、その間に四段になることができない場合、また二段に降級となった場合は退会となる非常に厳しい戦いが続くことになります。
2011年後期までに、延べ8名(1名が2回)受験しましたが、2007年前期の今泉健司さんが唯一の合格者となっています。
また、上記の受験資格を持つものについては編入試験を何度でも受けることが可能です。編入試験に合格し、奨励会入会後に四段になれなかったものも、再挑戦が可能です。
奨励会三段リーグ編入試験受験者
- 天野貴元さん(29歳 東京都八王子市)
- 受験資格:第51回赤旗名人戦優勝
- 師匠 :石田和雄九段
- 奨励会 :第50期三段リーグ(2012年3月)まで在籍
- 中川慧梧さん (22歳 京都府京都市)
- 受験資格:第31期全国アマチュア王将位大会優勝
- 師匠 :深浦康市九段
- 奨励会 :在籍歴なし
プロ棋士になるための三段リーグ
奨励会員と三段編入試験に合格した人は「三段リーグ」に所属することになり、四段昇級、プロ入りをかけて戦うことになります。
三段リーグは半年(4月~9月、10月~3月)を1つの期として各18対局を行います。各期の上位2名が昇格することになります。3位には次点が与えられ、次点を2回獲得したものも四段に昇格する権利を得ることができるようになっています。
奨励会は、満26歳の誕生日を迎えるまでに三段リーグを勝ち抜き、四段昇級ができないものは退会となってしまいます。三段編入試験に合格した場合は年齢制限がないとはいえ4期(2年)の在籍と限られており、狭きプロの門と言えるのではないでしょうか。
2/15(日)編入試験の第3・4戦の結果
「奨励会」三段リーグ編入試験の第3・4戦が2月15日に行われました。アマチュア天野貴元さん(29)は1勝1敗、中川慧梧さん(22)は2連勝となり、ともに通算2勝2敗となりました。
2人ともに3月7日に行われる第5・6戦で「2連勝」することが、編入試験合格の絶対条件となります。
3/7(土)編入試験の第5・6戦の結果
「奨励会」三段リーグ編入試験の第5・6戦が3月7日に行われました。アマチュア天野貴元さん(29)は2連勝で通算4勝2敗、中川慧梧さん(22)は1勝1敗で通算3勝3敗となりました。
この結果、天野さんは15日に行われる最終第7・8局で2連勝すれば三段編入となり、中川さんは不合格となりました。
天野さんにはこのまま連勝されることを、中川さんには次の機会を目指されることを期待しましょう。
3/15(日)編入試験の第7戦の結果
「奨励会」三段リーグ編入試験の第7戦が3月15日に行われました。アマチュア天野貴元さん(29)は2連勝が合格の絶対条件でしたが、第7戦で敗れ通算4勝3敗となり不合格となってしまいました。
天野貴元さんは「体調が悪くて負けたわけじゃない。自分の力が至らなかったということ。がんになった時は将棋をやめていたし、1年くらい将棋と離れていた期間もありましたが、今回、奨励会員の方と指して情熱を取り戻しました。7人の方には感謝を申し上げたいです。
また、試験を受けるにあたって、もう一度師匠になっていただいた石田和雄九段、機会をいただいた将棋連盟にも感謝いたします。
再挑戦の気持ちは今のところはありません。今回の試験はラストチャンスのつもりで受けました。今はベストパフォーマンスを見せられたというやりきった感の方が強いです」と話しています。