電王戦の阿久津八段、「カズ引退」の張本氏からプロを考える

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突然だが想像してみてほしい。
プロフェッショナルを貫くとはかくも難しいということを。

4月11日に行われた「将棋電王戦FINAL」、4月12日にTBS系「サンデーモーニング」で野球評論家である張本勲氏の発言を通じて「プロフェッショナル」とは何か、ということを考えさせられた週末となりました。

将棋電王戦FINAL

「将棋電王戦FINAL」では阿久津主税八段がコンピュータ将棋ソフトウェア「AWAKE」(開発者:巨瀬亮一氏)と対戦し、AWAKE開発者・巨瀬亮一氏の投了宣言により、わずか21手で阿久津主税八段の勝ちとなっています。

将棋電王戦FINAL第5局、阿久津八段vsAWAKE 阿久津八段勝利
将棋電王戦FINAL第5局の 阿久津主税八段対AWAKEの対局が4月11日、東京の将棋会館で行われました。 棋士側の2連勝のあと2連敗で迎えた最終局はAWAKE開発者巨瀬亮一さんによる開発者権限での投了により、わずか49分、21手で突然の終局。阿久津主税八段が勝利を収め、棋...

21手での投了に至った経緯として、「AWAKE」には「弱点」が存在しており、弱点を突かれたから即時に負けるわけではなく、負けが確定することではないものの不利な形勢におかれる、というものでした。

この「弱点」は2月に行われた電王戦の関連イベント「電王AWAKEに勝てたら賞金100万円」において、アマチュアとの対戦で露呈していましたが、電王戦のルール上「弱点」を修正することは認められておらず、プロ棋士との対戦には「弱点」をさらけ出した状態で臨むこととなっていました。

電王戦のルールでは「AWAKE」の修正ができないだけではなく、対戦相手となるプロ棋士に「AWAKE」を貸し出し、研究する期間を半年間与えています。

阿久津主税八段は、対戦後の会見で「半年前に(弱点を)発見していた」と言い、2月の関連イベント「電王AWAKEに勝てたら賞金100万円」の結果を持って弱点を発見したわけではありません。

「電王AWAKEに勝てたら賞金100万円」の解説をされていた高見泰地五段はTwitterで次のように語り、阿久津主税八段が「真似をした」と言われることを懸念していたことがわかります。

AWAKE開発者・巨瀬亮一氏が弱点を知ったのは2月のイベントでのことだと言い、「穴があるのは仕方がない」と将棋プログラムの難しさを語っておられます。

投了の意図として、「ハメられる形の中でもかなり損している局面。あのまま指し進めても勝ち目はなかった」と説明し、阿久津主税八段に対し「すでにアマチュアが指して知られているハメ手をプロが指してしまうのは、プロの存在意義をおびやかすことになる。一番悪い手を引き出して勝つというのは、何の意味もないソフトの使い方」と批判的なコメントを残すに至っています。

阿久津主税八段は「人間相手にはやらない作戦のため葛藤もあったが、事前にソフトを貸し出していただくというルールの中で、自分にできる最善ということでこの作戦を選びました」と「勝利」を優先した結果だとしています。

「将棋電王戦FINAL」第5局は阿久津八段の勝利:日本将棋連盟

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張本勲氏の発言

野球評論家である張本勲氏は「サンデーモーニング」のスポーツコーナーである「週刊ご意見番」で、J2リーグの横浜FC所属の元日本代表FW三浦知良選手(48)に対し、「もうお辞めなさい」と引退を促す発言に加え、「J2は野球でいうと2軍だから話題性がない」「若い選手に席を譲ってやらないと。しがみつく必要はないでしょ、これほどの選手なんだから」と厳しい意見を投げかけました。

様々な意見はあるでしょうが、張本勲氏は「プロ選手の引き際とはどうあるべきか」という観点から、全盛期を過ぎ一線級で活躍できないのであれば、後進の指導にあたり次なる話題性のある選手を育ててほしい、という趣旨の発言をなされたものと考えます。

また「J2は2軍」という発言についても、「2軍」という表現は適切ではなく実際に「J1」を目指す方々への敬意を欠いた発言であることは否めませんが、その国における最高峰の舞台で戦っていない、という意味合いだとも考えられます。

「サンデーモーニング」のスポーツコーナーにおける「ご意見番」として、厳しい意見、話題になる意見を求められていることから、自身の立場を踏まえた発言であったとも考えられます。

張本氏がカズに「もうお辞めなさい」発言 ネットで炎上:サンスポ

プロフェッショナル

阿久津主税八段は「葛藤」の末に選択した手段で、批判されることも覚悟の上だったことでしょう。しかし、「弱点」を突いた結果として21手での投了とはなりましたが、あのまま対局が続いていた場合、阿久津主税八段は必ず勝つことが求められます。「弱点を突いておいて負ける」ことはプロフェッショナルとして許されません。
電王戦FINALの経過が2勝2敗と五分の状態で最終戦の結果に委ねられたことも相当なプレッシャーとしてあったことでしょう。だからこそ必勝を期しての選択をしたことでしょうが、その選択も決して楽な道ではなかったことは間違いありません。

巨瀬亮一氏は、自身も「奨励会」に所属しプロ棋士を目指しておられました。巨瀬亮一氏の描くプロ棋士像は正々堂々と真正面から勝利に向かい、アマチュアの模範となるべきものだったのかもしれません。

待ち望んだプロとの対戦を「AWAKE」に委ねていたとえはいえ、真正面からの勝負にこだわった心情、自身は無しえなかった夢をかなえている対戦相手に勝ちたいという欲望など、複雑な心境ながらも「プロとの対局」を楽しみにしていたことが根底にあったのではないでしょうか。

張本勲氏は自らもプロ野球選手として記録に残る偉大な名選手として、「名選手の引き際とはこうあるべきだ」という持論を持っておられることでしょう。「辛口評論家」として厳しいことは言っておられますが、それも役割を果たしているのだと言えるでしょう。

三浦知良選手は日本サッカー界の功労者であることは言うまでもありません。現在は最盛期から比べると物足りなく映るかもしれませんが、ひとりのサッカー選手としてワールドカップを目指すモチベーションは高く、肉体を鍛えてチャレンジしている姿は必ず後進に伝わるのではないでしょうか。

プロとは何なのか。

立場により見え方、見せ方は異なります。

それでも、この週末の出来事は一人一人がプロであろうとした結果だったと感じています。

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