突然だが想像してみてほしい。
価格の手ごろなエキストラバージンオリーブオイルは偽物かも。
健康志向の高まりとともにヘルシーな油としてオリーブオイルの需要は拡大し、炒め物や調味料として活用されています。地中海地方の人々に心臓病が少ないのは日常から使用しているオリーブオイルの効果だとする説もあり、オリーブオイルが世界中で注目され品薄状態にもなりました。
また、オリーブオイルは美容にも効果があるとされ、女性用の基礎化粧品や洗顔石鹸にも使われており、オリーブオイルの中でも生の実から油分だけを搾り取った「バージンオリーブオイル」の最高品質、「エキストラバージンオリーブオイル」には高い抗酸化作用があり老化防止にも効果があるとされています。
健康や美容、老化防止にも期待される大人気のオリーブオイルですが、さまざまな問題が隠されています。
オリーブオイルは健康に良い?
オリーブオイルの主成分であるオレイン酸(オメガ9脂肪酸)は50~80%含まれており、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らし、脂質異常症や動脈硬化を防ぐ効果があると言われ、この効果から心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの予防に役立つとされています。
しかし、魚介類を中心として野菜やナッツ類、フルーツを積極的に摂取している伝統的な地中海料理こそが健康に良いのであって、オリーブオイルだけに健康効果があるわけではないとする研究結果があり、魚介類を多く食べる人は心臓病や脳卒中などが少ないことははっきりしています。
地中海料理が健康と言われるのもオリーブオイルだけでなく、むしろ魚介類に含まれるDHA、EPAなどのオメガ3脂肪酸の効果だとも考えられることに加え、オレイン酸は必須脂肪酸ではなく肉などの飽和脂肪酸から体内で合成されるため、栄養のバランスに気を付けた食事をしていればわざわざ植物油から摂取する必要のないことも要因として挙げられます。
エキストラバージンオリーブオイル
オリーブオイルの中でも生の実から油分だけを搾り取った「バージンオリーブオイル」の最高品質、「エキストラバージンオリーブオイル」は大きな人気を得ていますが、最近では「エキストラバージンオリーブオイル」の偽装が蔓延しているといいます。
エキストラバージンオリーブオイルは、オリーブの実を搾り不純物を取り除いただけの、いわばオリーブ100%ジュースとも言えます。オレイン酸に加え、ビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化物質を含み、老化防止や美容効果をもたらすとされています。
しかし、化学的に精製されたオリーブオイルをブレンドしたものや、粗悪なものには大豆油や菜種油をベースにエキストラバージンオリーブオイルを少し混ぜただけのものが流通し、イタリアンマフィアの資金源になるなど、エキストラバージンオリーブオイルの偽装が大きな問題となっています。
日本でも例外ではなくオリーブオイルの品質に関する法的規制がないために、一般的なスーパーマーケットなどで販売されているエキストラバージンオリーブオイルの8~9割は化学処理された安いオイルがブレンドされた偽物だと言われています。
日本も例外ではない
エキストラバージンオリーブオイルの偽物について、日本も例外ではありません。
エキストラバージンオリーブオイルの基準は、ヨーロッパなどの主要生産国が加盟する国際オリーブ協会(IOC)によって定められており、世界共通で品質が決められています。
しかし、日本にはオリーブオイルの品質に関する法的規制がないため、スーパーマーケットなどで売られるEXVオリーブオイルの8~9割は化学処理された安いオイルをブレンドした偽物といわれています。
とはいえ、法的規制そのものがないために、偽物のエキストラバージンオリーブオイルであったとしても「品質偽装」には当たらないのが現実です。
「本物」のエキストラバージンオリーブオイルであれば、健康や美容での効果や老化防止の効果も期待できるかもしれませんが、「偽物」は大部分が別のオイルであることもあり、恩恵はほとんどないと言えるでしょう。
そもそもエキストラバージンオリーブオイルは生の搾りたてだからこそ美味しいのですが、そのために日持ちもせず生産できる量にも限りがあるはずなのです。
日本人は偽物が好き?
日本でエキストラバージンオリーブオイルの偽物が横行するのには、法的規制がないことだけが理由ではなく、そもそも日本人の味覚ではエキストラバージンオリーブオイルをおいしいとは感じないとも言われています。
2014年に放送されたテレビ番組の調査で、日本人とイタリア人各10人に3種のオリーブオイルを目隠し試食させ、美味しいと思うものを選ぶ実験が行われました。
- A:普及品エキストラバージンオリーブオイル(約700円)
- B:ピュアオリーブオイル(約450円)
- C:高級品エキストラバージンオリーブオイル(約4400円)
結果、10人の日本人のうちAを選んだのが6人、Bが4人となった一方で、イタリア人は全員がCを選びました。
本物のエキストラバージンオリーブオイルにはポリフェノールなどが含まれ、苦味や辛味といった独特の風味を持ちますが、この風味が日本人には馴染みがなく「美味しい」とは感じなかったと考えられます。
実験に使われたエキストラバージンオリーブオイルの価格差でもわかる通り、本物はとても高価でとても気軽に買えるものではありません。
また、「ピュアオリーブオイル」や「プレミアムオリーブオイル」などといった名称で販売されているものも見かけますが、国際オリーブ協会(IOC)が定める最高品質のオリーブオイルは「エキストラバージンオリーブオイル」であり、メーカーが独自に表したものに過ぎません。
健康に良いからとオリーブオイルを使用していても、かえって身体に害を及ぼすものを摂取しているかもしれません。