突然だが想像してみてほしい。
運動後の翌々日に襲われる筋肉痛、原因は加齢ではない。
夏休みを利用して海水浴をしたり、あちこちを歩き回ったり、と普段よりも少し激しい運動をしたりすると「筋肉痛」になることはありませんか。
学生の頃など若いときには翌日に筋肉痛に襲われていたのに、年齢を重ねて筋肉痛が遅れてきた、といったことを実感している人もいるかもしれませんが、実際には加齢と筋肉痛の遅れの関係性を証明する科学的なデータはありません。
では、遅れてくる筋肉痛とはいったい何なのでしょうか。
遅発性筋痛
運動をした後、8~24時間後に発症、24~72時間後にピークを迎え、1週間程度で解消する筋肉の痛みを「遅発性筋痛」と呼びます。
過去には疲労物質である「乳酸」の蓄積が筋肉痛を引き起こすと考えられていました。実際に運動直後には筋肉に乳酸がたまり硬直することは確認されていますが、運動後1時間後には血中乳酸値は通常程度に回復し、筋肉痛が起こっている時点での血中乳酸値も高い値を持続しておらず、現在では否定的です。
そもそも筋肉痛の原因は複雑で、現在でもはっきりとしたことはわかっていないのが現状です。
有力な要因の一つとして筋収縮に関係しているという説があります。
筋収縮には、収縮しても長さが変わらない等尺性収縮や、長さが短くなる短縮性収縮、長くなる伸張性収縮があり、筋肉痛には伸張性収縮が関係していると考えられています。
伸張性収縮は収縮方向と逆の方向に引き伸ばされながら収縮しますが、運動などによる過程で筋繊維や周囲の結合織が損傷され、炎症反応が起こります。
この炎症の回復過程で、痛みを発生させる物質がつくられ、筋膜の神経を刺激することにより筋痛となるのではないかとされています。
筋肉痛にならないために
統計によると、筋肉痛の始まる時期と年齢には関係がみられませんが、年齢を重ねることで回復が遅れたり、痛みの程度が強くなる傾向が見られるようです。
また、普段から継続した運動を行っている人は「遅発性筋痛」のピーク時期と回復が早くなることもわかっており、「年を取るごとに筋肉痛が遅れてやってくる」という現象は、単なる加齢によるものではなく、運動をする機会が減少していることによるもので、痛みを和らげるためにも普段から運動をしておくことが望ましいでしょう。
筋肉痛を和らげるためには、運動後のアイシングが効果的とされ、血流を抑制し炎症を抑えることで痛みを軽くすることができます。アイシングの後にはマッサージで筋肉をほぐし、血流を良くしていくことが有効です。
他にも温冷浴も効果が期待でき、42度くらいのやや熱めのお湯に2~3分つかり、冷たいシャワーで1分程度冷やすことを3~5セット繰り返すと、毛細血管が収縮し血流を良くすることができ、老廃物や疲労物質の排出が促され疲労回復にも効果的でしょう。ただし、この方法は心臓に負担がかかるため、高血圧などの持病を抱える方は控えるようにしてください。
年を取って時間ができ、ゆっくりと各地を観光旅行してみたり、趣味のためにあちこち出かけてみたりするときに筋肉痛で移動するのが大変、とならないためにも普段から運動をして筋肉痛になりにくい体を作ることも大切です。
元気に年齢を重ねていきましょう。