蚊取り線香の「うずまき」に歴史あり

mosquito-150724

突然だが想像してみてほしい。
金鳥の夏、日本の夏。

各地で梅雨明けし暑い日が続いています。2014年の「デング熱」騒動も記憶に新しいところですが、媒介として注目された「蚊」が気になる季節にもなりました。

蚊に刺されないようにするための防虫製品には様々なものが発売されていますが、夏と言えば「蚊取り線香」を思い出す方もいるのではないでしょうか。

煙や独特のにおいが気になるなどの理由からか近年では見かけることも少なくなりましたが、風に乗った煙とともに殺虫成分を運び拡散性も高いことから、風通しの良い部屋や庭先などの利用に適しています。

そんな蚊取り線香の特徴と言えば「うずまき型」のデザイン。

蚊取り線香を世界で初めて発明、さらに「うずまき型」のデザインをも開発したのは、「金鳥」のブランドで知られる大日本除虫菊株式会社です。

「蚊取り線香」はどのようにして誕生し、なぜ「うずまき型」になったのでしょうか。

スポンサーリンク

蚊取り線香の誕生

1885年(明治18)、アメリカで植物輸入会社を経営するH.E.アモア氏は、日本のめずらしい植物を求め来日し、福沢諭吉氏の紹介により和歌山県の蜜柑農家を訪れました。

慶應義塾に入学するも病に倒れ帰郷し家業の蜜柑農家の手伝いをしていた、後に大日本除虫菊株式会社を創業する上山英一郎氏は、アモア氏に蜜柑や竹などを進呈し、お礼として殺虫効果のある「除虫菊」の種子を譲り受けました。

「アメリカでは除虫菊で巨万の富を築いた人がたくさんいる」とアモア氏より伝えられ、「荒れた土地でも栽培できる除虫菊なら、貧しい農家を救うことができるし、輸出すれば国も豊かになる」と考えた上山英一郎氏は、翌1886年から除虫菊の種子の栽培研究を開始し、1887年には栽培に成功、全国各地を講演し普及に努めます。

当初は除虫菊を粉末にして「ノミ取り粉」として使われていましたが、より手軽に使えないかを検討した結果、日本古来の「蚊遣り火」に注目、火鉢や香炉のまわりに除虫菊の粉末とおがくずを混ぜたものをくべる方法を考案しました。

しかし、「夏に火鉢」ということが無理な前提であり、普及には至りませんでした。

除虫菊の活用方法を考え、普及に努め全国各地を回る途中で仏壇線香からヒントを得て、1890年(明治23)には世界初となる棒状蚊取り線香「金鳥香」が誕生します。

棒状蚊取り線香「金鳥香」は約20cmで、鉄製の台の上に3本を立てて使用するようになっていましたが、約40分程度で燃え尽きてしまうという欠点がありました。

時間を延ばすためには長さを20cm以上にする必要がありますが、線香が倒れ火災が発生することも多く、単純に長くすることは折れやすくもなり、運搬の点から考えても限度がありました。

うずまき型蚊取り線香の発明

燃焼時間の延長と、安全性や運搬性という大きな問題を解決するきっかけとなったのは、上山英一郎氏の妻である、ゆき夫人の「うずまきにしたら、どうです?」という一言でした。

1895年(明治28)に「うずまき型蚊取り線香」として新しい形を得た蚊取り線香は、生産時の問題を抱え大量生産することが出来ずにいました。

乾燥させるため従来のように木の板の上に置いておくとくっつく、それではと吊るしておくと形が崩れてしまう、という問題を抱えていたある日、ゆき夫人は「金網の上で乾かしたら、どうです?」とふたたび窮地を救う一言をかけます。

試行錯誤を重ね完成した「うずまき型蚊取り線香」は線香も太く長さも約60cmと、約6時間連続して利用できるようになり、着想から7年が過ぎた1902年(明治35)に発売が開始、棒状蚊取り線香誕生から12年後のことでした。

この「うずまき型蚊取り線香」の生産時に使われた「木の芯に2本同時に巻き付ける手巻方式」は、機械化される1957年(昭和32)頃まで続いたといい、また金網の上で乾燥させる方法は現在も使われているといいます。

模造品や類似品と区別するための「左巻きうずまき」

「うずまき型蚊取り線香」が大きな評判を呼んだ上山英一郎氏は、1905年(明治38年)に日本除蟲菊貿易合資會社を設立し、日本だけではなく海外にも蚊取り線香を販売し、現在の「大日本除虫菊株式会社」の土台を築きました。

昭和初期には蚊取り線香が本格的に普及し、中には殺虫成分をほとんど含まないような模造品なども出回りたといいます。

1957年(昭和32)、「うずまき型蚊取り線香」生産の機械化にあわせ、「ネジが緩む」として嫌われていた「左巻き」をあえて採用し、当時、蚊取り線香を発売していた他企業の「右巻き」と差別化を図りました。

その後、マット式やリキッド式、ファン式など新製品が販売される中で、現在でも「蚊取り線香」は売れ続けています。

煙とともに広がる殺虫成分は即効性も高く、これまでにいちども「薬害」といったトラブルもなく、哺乳類などの恒温動物には安全性が高いとされ、こどもやペットがいる場所でも安全であることや、電源不要で場所を選ばない簡易さなどが受け入れられているからでしょう。

今年の夏は、ひさしぶりに蚊取り線香を使ってみてはいかがでしょうか。

スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です