突然だが想像してみてほしい。
市民マラソンブームの火付け役、「東京マラソン」も10回目。
2007年からスタートし、その後の「都市型マラソン」ブームの火付け役ともなった「東京マラソン」は、2016年大会で10回目の記念すべき大会となります。
3万5千人を超える参加者や、大会中の交通規制、10倍を超える抽選倍率の高さなど毎年のように注目を集める大会で、2008年の第2回大会の経済波及効果は376億円にのぼり、コース沿道の飲食店などでは、通常の1.5倍から2倍の売上になるとも言われています。
東京マラソンの人気を受け、大阪や名古屋、神戸や京都といった数万人が参加する「都市型マラソン」が全国に続々と誕生し、健康志向の広がりもありマラソンブームを後押ししてきたのは周知のところでしょう。
また、アメリカでもマラソンは大きな盛り上がりを見せており、世界最大規模のマラソン大会とされる「ニューヨークシティマラソン」は5万人を超える完走者を誇り、国内外から約25万人がニューヨークを訪れ、地元経済に与える影響は4億1500万ドル(約510億円)にものぼります。
アメリカでは約1200ものマラソン大会が開催されているといい、この15年ほどでマラソン大会の数は約4倍にも増えており、マラソンを取り巻くビジネスも巨大化し、業界の推定では14億ドル(約1718億円)規模にもなると言われ、今後もさらなる成長が見込まれています。
日本だけでなく世界でも広がるマラソンブームと、その裏側にあるビジネスの盛り上がり。なぜマラソンビジネスはここまで盛り上がっているのでしょうか。
女性ランナーの増加
ニューヨークシティマラソンでは、女性ランナーを増やすことで参加者の規模を押し上げることに成功し、現在では女性ランナーは全体の40%を占めるまでになっています。
アメリカのマラソンランナーの統計を見ると、1980年代にはわずか10%程度の女性ランナーは、2014年には43%にまで拡大しており、女性ランナーの増加に伴いマラソン関連のビジネスも活性化し、ランニングシューズやウェアと言った関連商品の売上も増加、関連企業ではさらなる女性顧客の獲得に力を注いでいます。
ニューヨークシティマラソンのタイトルスポンサーを務めるTata Consultancy Services(タタ・コンサルタンシー・サービシズ)によると、本番の大会までの練習期間中にランナーは1人あたり平均2足のランニングシューズを履きつぶす、という調査結果もあり、マラソンブームに乗りランニングシューズ業界の規模は約31億ドル(3805億円)にまで成長しました。
マラソンビジネスを支える女性ランナーが増加した理由には、マラソン大会の変貌も大きな一因です。
近年のマラソン大会はタイムを競うレースから、楽しめるイベントへと移り変わりを見せており、体力に自信がない人や初心者でも気軽に参加できるように、ハーフマラソン、5キロ、10キロなどの大会が次々に新設されています。
マラソンへの注目
マラソンが注目を集めるのは他にも理由があり、マラソンを通じてチャリティ活動へと参加することがうまく活用されています。
ニューヨークシティマラソンでは、参加希望者が多く抽選倍率も高くなっていますが、特定のチャリティ団体のために募金活動を行い、2500~3500ドル以上の寄付金を集めることができれば大会への参加が保証され、2014年には8500人ものランナーがチャリティ枠で参加し、3450万ドル(42億円)もの寄付金を集めました。
東京マラソンでもチャリティ団体のために募金活動をこない10万円以上の寄付を集めると、先着3000人で大会に参加することが可能となっており、2016年大会へは現在のところ3億円を超える寄付が集まっています。
また、マラソン大会に協賛することは企業にとってもメリットが大きく、イベントをサポートしている企業に対してランナーは好意的で、いわば歓迎された中で商品やサービスをアピールできる機会は貴重なものともいえるでしょう。
さらにニューヨークシティマラソン、東京マラソンなどのような大規模なイベントではランナーだけでなく、より広く多くのターゲットに接触でき広告の費用対効果も見込まれることから、マラソン大会へとスポンサー企業が引き寄せられているのでしょう。