突然だが想像してみてほしい。
人工呼吸を必要としない心肺蘇生法をより広く認知することで応急処置の実施率も向上する。
心肺が停止した場合の応急処置として、胸骨圧迫による心臓マッサージと人工呼吸をあわせて行うことが望ましいと広く認知されていますが、心臓マッサージだけでも救命率に変化がないことがわかっています。
日本では胸骨圧迫による心臓マッサージだけの心肺蘇生法を学会レベルで唯一推奨しており、心肺蘇生の実施率向上を目指して人工呼吸を省く方法が多く取り入れられています。
京都大環境安全保健機構の石見拓教授や川村孝教授の研究グループの発表によると、心肺停止した人の社会復帰数の増加に、胸骨圧迫による心臓マッサージだけの心肺蘇生法が大きく貢献しているとの調査結果をまとめました。
心肺停止時の応急処置
心肺蘇生については、長年において人工呼吸と胸骨圧迫による心臓マッサージの併用が標準とされてきた一方で、胸骨圧迫による心臓マッサージだけの実施でも救命率に変化はないとする研究報告がなされており、日本では近年、一般市民による心肺蘇生の実施率向上をめざし、人工呼吸を省いた方法が多く取り入れられています。
日本は学会レベルで人工呼吸を伴わない胸骨圧迫による心臓マッサージのみでの心肺蘇生法を学会レベルで唯一推奨している国で、今回の研究グループの報告はそれを裏付けるものとなりました。
研究グループでは2005年から2012年までに日本国内で心肺停止となり救急搬送された患者の約81万6千人について、一般市民による心肺蘇生の実施有無や、実施した心肺蘇生法の種別に加え、その後の社会復帰の状況などを調査しました。
その結果、胸骨圧迫による心臓マッサージだけの心肺蘇生を受けた人の割合は2005年の17.4%から2012年の39.3%に増加しており、胸骨圧迫による心臓マッサージだけで社会復帰できた人も、人工1千万人あたりの換算で2005年の0.6人から2012年は28.3人と大きく増えています。
石見教授は「胸骨圧迫だけの蘇生は、人工呼吸を伴う場合に比べて簡単。多くの人を対象にした講習が実施しやすく、蘇生の普及に有効だ」と説明しており、その上で「人工呼吸はこどもの心停止に有効とのデータもあり、学校の先生らにはオプションの講習として実施するのが望ましい」と話しています。