遺産分割の遺言書作成増加、でもトラブルも増加する一方

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突然だが想像してみてほしい。
遺された者たちが広げる骨肉の争いに、先立った者は何を思う。

遺産分割に関するトラブルが全国で増加しているといい、その背景には時代とともに高まる権利意識と、相続の際に「公平な分割」を主張するケースが増えていることが挙げられています。

人生の最期に備える「終活」ブームもあり遺言書への関心は高まっていますが、たとえ正式な遺言書が用意されていても内容次第では親族間の骨肉の争いに発展することは珍しくありません。

専門家は「遺言書があるだけで紛争が避けられると思うのは大間違いだ」と注意を呼びかけています。

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中途半端な遺言はトラブルの火種

遺言や相続にまつわるトラブルを多く取り扱う大阪市内の弁護士事務所に「遺言書に1億円の財産を兄弟二人で分けるように記載してあるが、実際には数千万円の財産しかなく、親と同居していた兄が食いつぶしたのではないか」と弟側からの相談が寄せられました。

兄弟は激しく対立してしまい、弟が家庭裁判所に調停を申し立てる事態にまで発展しましたが、そもそもの問題は遺言を残した親が財産の評価を勘違いしていたことによるもので、相談を受けた弁護士は「遺言書があったために争いが生じた典型例」だと話しています。

2014年度に大阪弁護士会に設けられている遺言相談センターには1781件の相談が寄せられ、そのうち遺産分割に関する相談は約33%の602件にまでのぼりました。

遺言相談センターの副委員長である藤井薫弁護士は、多くの相談事例では遺言書の内容に納得できず、「亡くなる前に介護したのに分け前が少ない」「親がこんな遺言を残すはずがない」などといった問い合わせもあるといいます。

過去には親の面倒を見る代わりに長男が遺産の大半を相続する戦前の「家督相続」の名残も見られましたが、現代はその名残も消え失せており、「バブル崩壊後の経済不況で、もらえるものはもらうという価値観が浸透した。中途半端な遺言はトラブルの元」と藤井薫弁護士は注意を呼び掛けています。

遺産相続問題は「普通の家庭」でも

司法統計によると、2013年度に全国の家庭裁判所に申し立てられた遺産分割に関する調停や審判は1万5195件で、10年前と比較すると約1.3倍と遺産相続トラブルが増加していることは明らかです。

また、高価な資産を持たない「普通の家庭」にも遺産相続トラブルは起こりえます。2013年度に調停が成立するなどした遺産分割事件の内訳によると、遺産が1千万~5千万円のケースが約4割と最多ながらも、1千万円以下も約3割を占めており、遺産が持ち家ぐらいしかない場合、分割が難しくなるために発生したトラブルだと考えられます。

さらには遺産を自分のものにしようというトラブルだけではなく、相続したくないという問題も発生しています。

田舎にある家や土地で買い手がつかない場合でも固定資産税の支払いや管理を行う必要があり、誰が相続するのかともめるケースが多いようです。

遺言でもめないためには

「終活」ブームもあり、法的効力の高い「公正証書遺言」を作成するケースが急増しており、2014年は10万4490件と10年前の約1.6倍となっています。

それにもかかわらず遺産相続トラブルの件数は増加しており、トラブルを未然に防ぐためにはどのようにするべきなのでしょうか。

裁判官時代に多くの遺産分割事件を担当した森野俊彦弁護士は、「あらゆる事態を想定した遺言書をつくる必要がある」と指摘します。

こどもに先立たれた場合は誰に財産を残すのか、自分を介護した人にどの程度財産を取得させるのか、といった細かな点までを考慮し、あいまいな部分や極端に公平性欠いた遺言を避けるべく弁護士などに相談することが大事だとしています。

しかし、どれだけ準備をしていたとしても「もめるときはもめる」とし、「遺産分割には感情の問題が入りやすい。結局、親族間の人間関係を良好に保つことが重要だ」と森野俊彦弁護士は付け加えています。

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