突然だが想像してみてほしい。
耳掃除は気持ちが良い、でも本来は必要のない作業であるということを。
毎日のようにお風呂上りに耳掃除をしてみたり、テレビや読書、インターネットをしながら耳掃除をする人は多いのではないでしょうか。耳の穴には快感を生じさせる迷走神経があり、耳かきで触れれば触れるほど気持ちがよくなるため、なかなかやめることができません。
しかし、耳かきで頻繁に耳掃除をしていると耳の中が傷ついているかもしれません。また、耳かきではなく綿棒で耳掃除をしている人も、汚れを取るどころかむしろ押し込んでしまっているかもしれず、耳掃除には注意が必要です。
そもそも耳には自浄作用が備わっており、基本的には耳掃除をする必要はないのです。
耳の中では、鼓膜の表面から耳の入り口に向かい常に細胞が入れ替わり、耳垢を外部へと押し出す力が働きます。また、食べ物を噛むことなど顎を動かしていると、耳垢は汚れやほこり、その他の異物粒子を含んで外耳道から外側へと排出するメカニズムになっています。
つまり、清潔にすべきなのは耳の中ではなく、耳の入り口付近の1.5センチ程度で十分で、耳の奥のほうまで耳かきで掻いてみたり、綿棒でこする必要はありません。
耳垢
耳の穴から鼓膜までの長さは約3センチの外耳道があり、耳の穴から3分の1のところに耳垢の元となる脂を分泌する耳垢腺があります。
耳垢の元となる脂は外耳道を清潔に保つために分泌され、埃と汚れから鼓膜を守り、表面を潤すをいう役割を果たしています。脂が乾燥すると、食べ物を口にしたり、会話をして顎を動かすたびに古い耳垢を外耳道から外側へと排出しているのです。
日本人はこの脂が少ない人が多く、6割の人が乾燥した耳垢であると言われています。そのため、日本では綿棒ではない耳かき棒が多く使われるており、欧米では逆に湿った耳垢の人が多く、耳かきはあまり販売されていないようです。
いずれにせよ、せっかく自浄作用によって入り口付近まで運ばれた耳垢を、耳かきや綿棒で耳の奥に押し込んでしまい、挙句の果てには自浄作用の働かないところにまで押し込んでしまったり、鼓膜を破ってしまうこともあります。
正しい耳掃除は、細めの綿棒で耳の穴1.5センチ以内のところを軽く拭く程度で十分で、毎日行う必要はなく月に一度で問題ありません。
どうしても耳が痒い場合は、耳の入り口にあるでっぱり部分「耳珠」を押さえ、揺らしたり顎を動かしてみると解消されます。
耳かきや綿棒を耳の奥深くまで入れるのは厳禁です。
掻きすぎて炎症を起こすと
耳の内側の皮膚は薄く傷つきやすいため、耳かきで掻き続けると炎症を起こし、出血や化膿して膿が出てしまう外耳道炎となってしまいます。外耳道炎は自然に治ることもありますが、治りかけのときにまた掻いてしまい悪化してしまうという悪循環を繰り返す人が多くみられます。
数日たっても痛みやかゆみが収まらないときには耳鼻科を受信し、飲み薬や軟膏を処方してもらうようにしましょう。
外耳道炎が悪化すると細菌に侵され痛みが激しくなり、時には我慢できないほどの頭痛をも引き起こします。また、耳周辺のリンパ腺が腫れ耳から顎にかけて痛みを伴うこともあります。
日頃耳かきで耳掃除をしている場合など、知らずに傷をつけていることもあります。その際の注意点として、イヤホンなどで耳を密封し続けた場合や汗をかいた後など、湿気で耳の中にカビが生えてしまうことがあるため、暑い時期は運動しながら長時間耳を塞いだままにしておくことは控えることが望ましいでしょう。