「環境DNA」水を調べるだけで生息生物、生息量を判別

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突然だが想像してみてほしい。
水に溶け込んだDNAで生物の特定ができるということを。

神戸大学の源利文特命助教授らの研究グループなどが開発した、川や海などの水成分を調べることでどのような生物が存在しているかがわかる「環境DNA」と呼ばれる新しい技術が大きな注目を集めています。

北里大学のグループでは「環境DNA」の技術を用いて、絶滅が危惧されるニホンウナギの稚魚と、外国産の別種のウナギの稚魚と見分ける手法を開発し、2015年3月に日本水産学会で発表しています。

ウナギの稚魚を見分ける手法により、稚魚を殺すことなく一度に大量の稚魚の種類を判別することができるようになり、水産庁ではウナギの稚魚の販売業者や養殖業者が技術を活用できるように検討しています。

「環境DNA」は日本で独自の進化を遂げた技術で、絶滅が危惧されている生物の保護や漁業への応用に期待が高まっています。

最近は欧米でも急速に技術開発が進み、各国間の競争は激しさを増しています。技術を開発した源特命助教は「今後は、より高い精度で、住んでいる生き物の種類を判別できるようにしたい」と話しています。

水を調べれば生き物が分かる 環境DNA:NHKニュース

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「環境DNA」の技術

なぜ水を調べるだけで、生息する生物がわかるでしょうか。

源利文特命助教授らの研究グループが着目したのは、川や海などに住む魚や両生類から放出された微量のDNAでした。DNAを分析するために、ガラス繊維の目の細かいフィルターで水をこし、フィルターに付着した魚や両生類の体の粘液やフンを薬剤や遠心分離器にかけDNAを抽出します。

抽出されたDNAはごく微量のものとなるので専用の機械でDNAを増幅し、ようやくDNAの分析が行えます。一連の作業は4時間ほどで、どの生物のDNAかを判別できるとしています。

源特命助教授がこの手法を思い付いたのは今から7年前のことで、当時問題となっていたコイヘルペスウイルスの研究を行っている時でした。

コイを飼育している水槽の水から、コイヘルペスウイルスのDNAを調査しようとしたところ、コイのDNAが多く検出されることに気づき、同じ現象が海や川でも起きているのではないかと考え調査したところ、さまざまな生物のDNAの検出に成功しました。

DNAの分析から人物の特定を行う手法は警察など科学捜査の手法として確立していますが、海や川に溶け出したDNA濃度は極めて薄く、生物の判別は難しいと考えられていました。

しかし、微量のDNAを増幅して高い精度で分析を行う機械が開発されたことで、「環境DNA」という新しい技術の開発にもつながりました。

「環境DNA」でオオサンショウウオの生息確認

「環境DNA」の技術の実証実験は日本国内の多くのグループが取り組んでいますが、神戸大学の源特命助教授らの研究グループでは、国の特別天然記念物に指定され絶滅が危惧されるオオサンショウウオの生息調査を行っています。

オオサンショウウオは体長が1メートルを超えるものもいる世界最大の両生類ですが、水流が急な川の上流で岩場に隠れて生息し、夜行性でもあるため、その姿を捕らえることは困難でした。

源特命助教授らは兵庫県西部、佐用川の43か所の水を分析したところ9か所からオオサンショウウオのDNAが検出されました。分析の結果をもとに、実際に生息しているかの調査を市民グループの協力を得て行ったところ、体長60センチから80センチのオオサンショウウオが7匹見つかり、水の流れが激しいところでもDNAが検出された場所と生息が確認された場所はほとんど一致しており、今後は川の中でDNAがどのように拡散しているか研究を進めたいとしています。

オオサンショウウオを近年、日本固有の種の生息が中国産の外来種によって脅かされており、「環境DNA」の技術により在来種と外来種を区別できるようになることで、源特命助教授は「外来種の侵入を早い段階で発見することができるので、より早く、駆除などの対策を取ることができる」と話しています。

「環境DNA」で生息数の把握

「環境DNA」では、生物の生息確認だけではなく、おおよその量を推測できることにも利用できることがわかってきており、京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾准教授のグループでは、京都府の舞鶴湾の潜水調査から推測されたマアジやカタクチイワシ、アカクラゲの量と、海水から調査した「環境DNA」量の関係を調査したところ、比例した関係性があることがわかりました。

益田准教授は「魚を一切、傷つけることなく、膨大なデータを取得でき、水産資源の量を把握したり、海水浴シーズンにクラゲの大量発生を予測したりするのにも活用できる。海の資源を管理していくうえで非常に有用なツールになる」と話しています。

益田准教授は魚がどのようにDNAを放出するかを調査し、広い海で水産資源を正確に把握できる手法の開発を進めたいとしています。

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