「日本版司法取引」導入で詐欺など組織犯罪撲滅に期待

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突然だが想像してみてほしい。
組織犯罪の全容解明につながるか、それとも。

衆議院の衆院法務委員会で8月5日、警察や検察による取り調べの録音録画(可視化)義務付けや日本版司法取引の導入、通信傍受の対象犯罪拡大を柱とした刑事司法改革の関連法案が可決されました。

7日に衆議院本会議で可決後は参議院での審議に移り、今国会中に成立する見通しです。

取り調べの録音・録画(可視化)に否定的な声の代表が「容疑者と取調官の信頼関係が崩れる」「共犯者について話さなくなる」といったもので、司法取引の導入によりこのしたデメリットをカバーできると捜査機関側では考えています。

司法取引は経済事件や薬物銃器犯罪などを対象に、容疑者らが他人の犯罪の解明に協力する見返りとして、検察官が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりできる制度です。反対意見として「虚偽の供述で無実の第三者が冤罪に巻き込まれる恐れがある」との声が上がっていました。

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日本版司法取引

司法取引には2つの種類があり、容疑者が自分の罪を認めて処分を軽くしてもらう「自己型」と他人の犯罪を明らかにして寛大な処分を得る「他人型」があります。

今回、「日本版司法取引」として導入が検討されているのは「他人型」の司法取引となります。

司法取引の事例として、振り込め詐欺事件で末端の容疑者が逮捕された場合に、検察官は首謀者を逮捕するために容疑者に司法取引を持ち掛けるケースが考えられます。

容疑者が捜査に協力し首謀者に関する情報を供述する代わりに、検察官は求刑を軽くしたり起訴猶予にするという司法取引を行います。

刑事司法改革の関連法案では司法取引ができる事件として、詐欺や贈収賄のほかに薬物や銃器犯罪、また企業の経済犯罪など年間8万件程度を対象としており、被害者感情を考慮して殺人事件などは除かれています。

アメリカは司法取引を多用

司法取引は罪を認めるかどうかで扱いが異なる制度を持つ、アメリカやイギリスで主に行われており、特にアメリカは大半が司法取引で処理されています。

アメリカでは罪を認めずに陪審または裁判官による裁判を選ぶ人はごくわずかです。陪審は市民から選ばれた12人一致で有罪・無罪が評決され、有罪となると裁判官が量刑を決定する、という流れになる一方で、司法取引を行うと早期にだいたいの量刑が決定することになります。

容疑者はさっさと決着がつき、検察官は検挙率が上がり、裁判所も数多くの審理を抱え込まずに済むという、アメリカならではの合理性が浸透しているからだともいえ、殺人事件でさえも司法取引は当たり前に行われています。

また、2015年に明らかとなった国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件では、FIFAの元理事が自身の罪を軽くすることを条件にわいろに関する情報を提供したことが、幹部らの起訴につながったと見られています。

他にもアメリカ屈指の大企業で、2000年代はじめに経営破たんしたエンロンやワールドコムの巨額の不正経理事件でも司法取引が使われ、内部事情に精通した財務部門の幹部の供述によって最高経営責任者の有罪に結びつきました。

司法当局の幹部は「司法取引がなければ決して起訴できなかった」と語り、捜査機関にとってうってつけの捜査手法であることがわかります。

日本での司法取引導入には慎重姿勢も

一方、日本では司法取引の導入に慎重な姿勢が示されてきました。

理由として他人の悪事を密告して責任を免れる、といった行為が日本人の気質に合わないと考えられてきたからではないかと考えられてきました。

しかし、振り込め詐欺や暴力団が絡んだ事件では末端の容疑者の供述だけでは全容解明が難しくなるなど犯罪組織の巧妙化もあり、末端容疑者の罪を軽くしてでも犯罪組織を壊滅させることが重要になってきました。

それでも被害者家族の心情として、直接的な被害をうけた容疑者が司法取引に応じて起訴を免れたり、刑が軽くなったような場合に「より巨大な悪事を裁くために仕方ない」と納得できるかは難しい問題となるでしょう。

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