高所平気症のこどもが増えている?高層マンションで恐怖心育たず

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突然だが想像してみてほしい。
こどもは好奇心の塊。楽しいことばかりではなく怖いこと、痛いことを教えるのも教育。

高層マンションで生活する子育て世帯が増加し、幼少期から高い場所で生活していることから高所に恐怖心を抱かない「高所平気症」ともいえるこどもが増えています。専門家は「興味のあるものがベランダの外にあれば、どんな恐ろしい行動でもとれる」と警告を発しています。

東京消防庁によると、管轄区域内で発生した乳幼児の高所転落事故は2011年~2014年の間に65件発生しており、うち56人が重症以上と診断されています。2015年7月にもマンション1階にあるコンビニエンスストアに母親が出かけている間、12階の自宅で留守番をしていた4歳の女児がベランダから転落死する痛ましい事故が発生しました。

また、2014年5月には10階のベランダから4歳の男児が転落死する事故が発生しており、母親は男児の兄弟に忘れ物を届けるため1階に外出していたといい、部屋には男児と妹だけが残っていました。

こどもがベランダから転落する事故の多くは、「こどもだけが室内に残っているとき」に発生していることが多く、「親がいなくなった不安から親を探し、ベランダから外をのぞいたのではないか」などと考えられています。

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「高さ」に恐怖を抱かない

福島学院大学の織田正昭教授(福祉心理学)は、「高層マンションで育つことで、高いところが怖くないという高所平気症のこどもが増えている」と指摘します。

織田正昭教授は昭和60年代頃から高層マンションで子育てをする世帯が増加してきたこと、こどもが高い場所を危険と判断する感覚は4歳頃までに大人の約8割ほどのレベルに発達しますが、この時期を高層マンションで過ごすこどもには高い場所を危険とする感覚が育ちにくいと言います。

こどもは自分の目線の高さを基準に地面との距離を把握し「高いかどうか」を判断していますが、高層マンションで暮らしていると空に近い景色は見えるものの地面が見えないために感覚が発達しにくいと考えられ、「高層マンションで暮らすこどもには、意識的に地上で遊ぶ機会を取り入れ、滑り台やジャングルジムなど地面が見える範囲で様々な高さの遊具で遊ぶなど、高さの感覚を掴ませることが重要」だと織田正昭教授は注意を呼び掛けています。

おしゃれなベランダが命取りに

都会のマンションを中心に、限られた室内の居住スペースを有効活用するべく、ベランダを部屋の延長として利用する家庭も多くみられます。

ベランダにテーブルセットを置き、自宅でオープンテラスのカフェのような気分を味わったり、ワインやお酒をおしゃれに楽しんでみたりというライフスタイルが提案される中、ベランダに物が増えることがこどもの転落リスクを高めているという指摘もあります。

東京都のある女性は、4歳の長女が生まれたときからマンションの10階で生活していますが、ベランダからの眺めがよくテーブルや椅子を置き、コーヒーなどを飲みながら景色を楽しみ、長女も雨など外出できないときにはベランダで遊ぶことも多く、ベランダも生活空間のひとつとして有効に活用していました。

しかしある日、長女はベランダの椅子の上にのぼり、ベランダの手すりに手をかけ地面をのぞきこんでいたのです。女性はその瞬間を「ぞっとした」と言い、「こんな高いところから外を見ようとするなんて、思ってもいなかった」と振り返り、すぐさま椅子を片付けたといいます。

高さ110センチの手すりも簡単に上れる

こどもは大人の想像がつかない行動に出ることも多く、福祉の視点を生かしたまちづくりを研究する日本大学理工学部の八藤後猛教授は、「子供の身体能力は、大人が思っている以上に発達していることを知ってほしい」と指摘します。

八藤後猛教授は、東京都内の幼稚園児90人を対象に行った調査で、4~6歳のこどもでも高さ70センチ程度の台には簡単に足をかけて上ることができたとしており、現在の建築基準法ではベランダの手すりの高さは110センチ以上と定められていますが、もし70センチの椅子などの上にこどもが上った場合、身体の半分以上は手すりを超えてしまうことになります。

また、高さ20~30センチ程度のプランターのような踏み台になりうるものでも、それを足場としてベランダの手すりに足をかけ身を乗り出すことができてしまうことになります。

「こどもは頭が大きく、乗り出してバランスを崩しただけで簡単に転落する可能性がある」と八藤後猛教授は警告します。

他にも、エアコンの室外機などは柵から離れたところに設置してあれば安全だと考えられがちですが、柵から室外機までの距離が60センチ未満であれば簡単に飛び移ることができてしまいます。八藤後猛教授は「こどもはまるで忍者のような動きができることを頭に入れておいてほしい」と話し、こどもがひとりでベランダに出られないようにするため、施錠を二重にするなどの対策を日々徹底することが大切だと言えるでしょう。

構造的な問題からリスク上昇

こどもを抱える家庭では、転落や危険防止のためベランダに物を置かないなどの対策をとっていることも多いでしょう。しかしマンションの構造的な問題から転落リスクが高いと考えられる物件もあります。

昭和40年代から50年代頃にかけて建設されたマンションなどでは、ベランダの柵に唐草模様などデザイン性を持たせた装飾が施されているものが多く、このような柵はこどもにとって足場となる部分がたくさんあることになります。

このような柵の場合は、半透明のアクリル板などで室内側からカバーすることで対策出来るといいますが、外が見えない素材でカバーしてしまうと、「外を見たい」というこどもの好奇心を刺激してしまい、ベランダの柵を上りたがることにも繋がるため注意が必要です。

一方でこどもの転落事故が相次いでいることを受けて、独自に設計基準を見直した取り組みもあります。

分譲マンションを手掛ける大京(東京都渋谷区)では2012年に「バルコニーの足掛りに対する安全対策」をまとめ、エアコン室外機とベランダの柵との距離は60センチ以上あける、室外機を置く場所を高さ90センチ以上の柵で囲う、などの項目を定めました。

大京の品質管理課の担当課長は「転落対策を取れば、バルコニーの面積が狭くなることは事実。ただ、安全には変えられない」と話し、日本大学理工学部の八藤後猛教授も「安全を確保するためには、建築基準法での柵の高さの規制をより厳しくするなど、見直しが必要ではないか」と現在の基準を見直すことを提唱しています。

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