突然だが想像してみてほしい。
本と読者をよく知るものが選ぶものだからこそ価値があるということを。
全国書店員の投票から選ばれる、書店員がいちばん売りたい本「2015年本屋大賞」の各部門受賞作が4月7日7時に発表され、上橋菜穂子さんの「鹿の王」が大賞に選ばれました。
受賞作「鹿の王」は未曾有の危機に立ち向かう父と子を描いた長編作品で上巻「生き残った者」、下巻「還って行く者」の2巻が刊行されています。
上橋菜穂子さんは「本屋さんとは、子どもの頃から一緒に人生を歩んできた。人生で初めてのアルバイトは書店でした。書店のみなさんが本を読んでくれて、『面白かった』と投票してくれたのが本当にうれしい」と喜びを語りました。
過去に受賞作はいずれもベストセラーとなり映画やテレビドラマ化されるなど影響の大きい「本屋大賞」の対象作品は2013年12月1日から2014年11月30日の間に刊行された日本のオリジナル小説となっており、その中から全国の書店員が「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票が行われます。
一次投票は2014年11月1日より2015年1月4日までに行い、全国461書店580人による投票の結果、上位10作品が「2015年本屋大賞」ノミネート作品として決定しています。
「2015年本屋大賞」は4月7日午後7時から東京都港区で授賞式が行われ、式典のなかで二次投票の結果、選ばれた受賞作が発表されます。
ノミネート10作は作品名五十音順に、次の通りとなっています。
- 伊坂幸太郎さん「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎)
- 吉田修一さん「怒り」(中央公論新社)
- 川村元気さん「億男」(マガジンハウス)
- 阿部和重さんと伊坂幸太郎さん共著「キャプテンサンダーボルト」(文藝春秋)
- 西加奈子さん「サラバ」(小学館)
- 上橋菜穂子さん「鹿の王」(角川書店)
- 月村了衛さん「土漠の花」(幻冬舎)
- 辻村深月さん「ハケンアニメ!」(マガジンハウス)
- 柚木麻子さん「本屋さんのダイアナ」(新潮社)
- 米澤穂信さん「満願」(新潮社)
本屋大賞
出版不況といわれ本の売り上げと書店数が減少する中で、出版される本の点数だけが増えていく危機的な状況を背景として、出版界の苦境のなかで本を売る大きな機会である直木賞の受賞作が「該当作なし」(第128回-2003年1月発表)となったことに憤りを覚えた杉江由次氏(本の雑誌社・営業担当)が、普段接する書店員らの声を集め「自分たちで何かをつくろう」と考えたのが「本屋大賞」設立のきっかけです。
本屋大賞は「全国書店員がいちばん売りたい本」をキャッチコピーにしており、日常的に読者に本を売る立場である書店員こそが商品である本と、顧客である読者を一番よく知る立場であると考え、投票資格者として位置付けています。
本屋大賞の結果は一般にも注目されており、現在では直木賞や芥川賞を受賞した作品よりも売り上げ部数が伸びる賞となっています。
本屋大賞には複数の部門が設けられており、対象作品・選出方法が異なります。また、受賞作品の作者には正賞としてクリスタルトロフィーが、副賞として10万円分の図書カードが授与されています。
本屋大賞作品の決定まで
過去1年間に刊行された日本の小説を対象とし、一次投票で1人3作品を選び投票し、上位10作品で二次投票が行われ決定します。
一次投票には制約はなく、二次投票においては「ノミネートされた10作品を全て読み、推薦理由を記載し投票する」という制約があります。
二次次投票では3作品に順位をつけて投票し、順位に応じた点数をつけて集計されます。各順位の得点は、1位が3点、2位が2点、3位が1.5点となっています。
過去の本屋大賞受賞作
回 | 年 | 作品名 | 作者 |
---|---|---|---|
1 | 2004年 | 博士の愛した数式 | 小川洋子 |
2 | 2005年 | 夜のピクニック | 恩田陸 |
3 | 2006年 | 東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜 | リリー・フランキー |
4 | 2007年 | 一瞬の風になれ | 佐藤多佳子 |
5 | 2008年 | ゴールデンスランバー | 伊坂幸太郎 |
6 | 2009年 | 告白 | 湊かなえ |
7 | 2010年 | 天地明察 | 冲方丁 |
8 | 2011年 | 謎解きはディナーのあとで | 東川篤哉 |
9 | 2012年 | 舟を編む | 三浦しをん |
10 | 2013年 | 海賊とよばれた男 | 百田尚樹 |
11 | 2014年 | 村上海賊の娘 | 和田竜 |
12 | 2015年 | 鹿の王 | 上橋菜穂子 |