新国立競技場設計者「アンビルトの女王」ザハ・ハディド氏

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突然だが想像してみてほしい。
「アンビルトの女王」はテクノロジーの進歩を待ち続ける。

新国立競技場(東京都新宿区)の建設問題で、デザインを手掛けた女性建築家ザハ・ハディド氏が注目を集めています。

現代建築における脱構築主義を代表する建築家の一人として知られるザハ・ハディド氏は1950年10月31日生まれの64歳、イラクのバグダッド出身でイギリスに拠点を置いて活動する女性建築家です。

2004年には建築界のノーベル賞と言われる「プリッカー賞」を女性建築家として初めて受賞しました。

ザハ・ハディド氏の斬新な建築デザインは国際的なコンペでも認められるものの、斬新すぎるがゆえに建築物が完成することなく立ち消えになってしまうという「アンビルトの女王」という異名を持っています。

新国立競技場も2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場として使用される予定ですが、当初のザハ・ハディド氏のデザイン案からは部分的に修正が加えられ、首都高まで伸びるスロープが削除、開閉式屋根については東京オリンピック後に改修となることが決定しているほか、ドーム構造を支える2本の巨大な「キールアーチ」というデザインの特徴的な部分も見直される可能性が出ています。

巨大すぎるが故の景観への影響、建築にかかる費用が莫大であることなど問題は山積みですが、新国立競技場もまた「アンビルト」のリストに加わってしまうのでしょうか。

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「アンビルトの女王」と呼ばれる理由

ザハ・ハディド氏は、私立建築学校英国建築協会付属建築専門大学(AAスクール)で建築を学び、1977年に卒業後はAAスクールの教師でもあったオランダ人建築家レム・コールハース氏の建築設計事務所Office of Metropolitan Architecture(OMA)で働き、建築家としてのキャリアをスタートし、1980年に独立、ロンドンに自身の事務所を構えました。

ザハ・ハディド氏の名を知らしめたのは1983年に行われた、香港のビクトリア・ピーク山上に建設が予定されていた高級クラブ「ピーク・レジャー・クラブ」(The Peak Leisure Club)のコンペで1位を獲得し建築界に大きな衝撃を与えたことによるものでした。

奇抜な色を用い、浮遊する無数の破片が散らばるようなスピード感のある斬新な表現をされた設計案は、コンペ勝利直後に事業者が倒産したことで実際に日の目を見ることはありませんでした。

1980年代にはハーバード大学、イリノイ大学シカゴ校で教鞭をとったこともあり、1988年にニューヨーク近代美術館が主催した「脱構築主義者建築展」などでも注目されましたが、独立後の十数年間は実現に至った建築はひとつもありませんでした。

日本でも1986年の「富ヶ谷ビル」、1987年「麻布十番のビル」を手掛けたものの、バブル崩壊により計画は中断となっています。

麻布十番ビル:Google画像検索結果

富ヶ谷ビル:Google画像検索結果

ザハ・ハディド氏が「アンビルトの女王」と呼ばれてしまう利用として、当時の技術ではザハ・ハディド氏のデザインを実現する方法がなかったことにあります。

ザハ・ハディド氏の建築デザインはテクノロジーの発展と密接な関係があり、21世紀に入りロンドンオリンピックで使われたアクアティクス・センター、香港工科大学のジョッキークラブ・イノヴェーション・タワーをはじめ、徐々に実現されるようになってきています。

これまで不可能だとされた構造解析やモデリングなどがテクノロジーの進歩により可能となり、現代技術をもってすれば、ザハ・ハディド氏は「アンビルトの女王」ではないと言えるのかもしれません。

「アンビルト時代」の終焉

その後、1990年に札幌のレストラン「Monsoon Restaurant」の内装を手掛けたことが、キャリア初のプロジェクト実現となり、1階のメインダイニングは氷のイメージ、2階のダイニングラウンジは炎をイメージしたデザインで、家具もデザインしています。

また、それまでは「建てた建築よりも、実現しなかったプロジェクトの方が有名」と言われていましたが、1993年にはドイツの「ヴィトラ消防署」が完成、この後はデザイン実現のための三次元解析・施工技術が進歩し次々にプロジェクト実現に恵まれていき、改めて独創性と構想力が高く評価されています。

2004年には「建築のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を女性で初めて受賞するなど、2005年「BMWセントラル・ビル」(ドイツ)、2005年「オードロップゴー美術館」(デンマーク)、2005年「ファエノ科学センター」(ドイツ)、2008年「サラゴサ国際博覧会ブリッジ・パヴィリオン」(スペイン)、2010年「ローマ21世紀現代美術館」(イタリア)、2012年にはロンドンオリンピックの会場である水泳センター「アクアティクス・センター」など数々のプロジェクトを手掛け、世界中で大活躍を見せています。

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